クラウドファンディング・ラボラトリでは
ユニークなクラウドファンディング・プロジェクト(案件)を
(主観的にではありますが)ピックアップ。
『一押しプロジェクト事例集』として、ご紹介していきます。
今回取り上げるのは、
大学と企業がコラボして製品作りを目指す
クラウドファンディングプロジェクトの事例を1つ。
自分で好みの配列に変更できるキーボード『Trickey』の製品化プロジェクトです。
1 | 国/都道府県 | 国内/東京 |
2 | 運営サイト | Kickstarter(米国) |
3 | 調達型 | 購入型 |
4 | 業界/セクター | 産学共同/製造業(デジタル製品) |
5 | 掲載時期 | 2015年3月~4月 |
6 | 目標設定額 | $ 30,000 (約360万円 $1=約¥120、2015年3月現在) |
7 | プロジェクトオーナー関連サイト | http://www.t.u-tokyo.ac.jp/pdf/2015/20150311_trickey.pdf (プレスリリース) |
もともと東京大学工学部の講義で大学生たちが課題として開発したものを、
株式会社キビテクと協力して製品化を目指すことになった事例です。
キーボードの配列をカスタマイズ出来てどうするの?
と思われる方も多いかと思いますが・・
例えばPCで「デザイン」「イラスト」「DTM(音楽)」などの
ツールを頻繁に使うクリエイターの方や、オンラインゲームで遊ぶ方は、
ツールやゲームごとに必要なショートカットキーが
まとまっている方が使いやすかったりするんです。
また、「Ctrl+Z(やり直し)」など
従来なら2つのキーを押さなくてはいけない操作を
単一のキーに設定できるようになれば、かなり効率もUPします。
こうしたキーボードの使い方をする人によっては、
何かと重宝するのではないかと思っています。
リワード設定について
リワードとしては、$1の支援者を含め、
支援者全員の名前がスポンサーとしてキビテク社のWebサイトに掲載されます。
また支援額$99〜$715 のリワードは、
完成したキーボードを製品として受け取れますが、
支援額が高額なほど「キーの数」と「キーを設置するボードの数」が
多い製品がもらえることになっています。
ユニークなリワード設定
『EARLY BIRD(アーリー・バード)』
そして、本事例で1つ注目なのが
『EARLY BIRD(アーリー・バード)』
という、早期割引制度といいますか・・
早期支援者を優遇する仕組み。
このプロジェクトでは、
全く同じ内容のリワードに先着50名まで(=Early Bird期間)は$99、
その後は$135(51人目からの支援者=Early Bird期間終了後)の
2種類の支援額レベルを設定しています。
これは、同じリワードをもらう場合でも、
・プロジェクト掲載スタート時に支援するか?
・掲載後しばらくたってから支援するか?
によって支援額を異なるレベルに設定にし、
早期支援者にインセンティブを与えて前倒しに支援を促す仕組みです。
これは、新規にオープンしたばかりのホテルで、
早期予約(または先着何名まで)であれば割安になるのと、
似たような仕組みですよね。
なぜ、Early Birdを導入?
ユニークなアイデアを
初めて製品化する場合によくあるパターンなのですが、
製品が本当に支援されるのかどうかは、
・「商品がユニーク」であればあるほど
・「新規性」があればあるほど
実際ふたを開けてみないとわからない部分が大きいわけです。
支援者としては、
製品の良し悪しを技術的に判断して
「これは支援する価値あり!」
と支援を決める場合もあるでしょうが、
それとは別に、
「すでに多くの支援者がいるのか?ほとんどいないのか?」
というところも心理的な面での支援判断材料となりますよね。
プロジェクトオーナーからすれば、
プロジェクト掲載後、支援者がいない・・という
寂しい状況はなるべく避けたいわけで、
他人はどうであれこの製品を支援したい!という人や
技術的にこの製品の価値がわかる人をサポーターとして早期に確保し、
追随するサポーターを増やしたいという意図があります。
さらに、プロジェクト・マネジメントの観点から
プロジェクト掲載時から2か月間、終了間際になるまで、
資金調達の目途がまったく見えないよりは、
インセンティブを与えることで、計画を立てることができる、
または、掲載期間中でも前倒しで製品製作を開始できる、
というメリットもあります。
他にまれなパターンとしては、
リワードが製品の場合、一定の見込み受注数を超えてしまうと、
製作現場の製造キャパシティーを超えてしまい、
製作コストがアップしてしまうケース。
その場合もEarly Birdを設定し、
一定数を超えた場合の支援額を
高額に設定することもありますが・・。
大学と企業の連携で、
クラウドファンディングの活用は今後増えていく?
大学と企業が提携して製品化を目指すことは過去にもありましたが、
アイデアや技術は素晴らしくても、実際、開発〜製品化までこぎつける為の
資金を調達する事ががネックになるケースが多くありました。
2015年3月時点では、
こちらのプロジェクトについてはまだ、募集中の段階なので
結果はまだどうなるかは分かりませんが、
こうしたクラウドファンディングの仕組みを活用しながら、
大学(並びに研究機関)と企業が連携し、
アイデアや技術の製品化を目指す動きは、
今後増えていく可能性もありそうですね。