離島にコミュニティ作り!ゲストハウス開設のクラウドファンディング成功事例(長崎県五島列島福江島)

クラウドファンディング・ラボラトリではニーズに応じて、
注目のクラウドファンディング・プロジェクトをピックアップ。
『一押しプロジェクト事例』として、ご紹介しています。

今回は、「島おこし」x クラウドファンディングの事例。
長崎県五島列島の福江島で築88年の古民家をリノベーションして、
ゲストハウスを作るプロジェクトです。

観光拠点としての宿泊施設や
人が集まる場所などの開設を考えている方には、
ぜひ参考にして頂きたい事例となっております。

A. プロジェクト概要

長崎県五島列島福江島に
ヒト コト モノをつなぐ、ゲストハウスを作りたい!

https://motion-gallery.net/projects/gotoguesthouse

(画像:Motion Galleryプロジェクトページ)

国/都道府県 国内/長崎県五島列島福江島
運営サイト Motion Gallery
調達型 購入型
業界/セクター 地域活性化/宿泊施設開設
募集時期 2016年2月頃
目標設定額/達成金額/支援者数 2,000,000円 / 2,159,353円 / 151人
リワードの金額範囲 3,000円~300,000円
プロジェクトオーナー
(関連サイト)
個人(Iターンデザイナー2名)

公式ブログ:
http://nedokoro-nora.com/
Facebook:
https://www.facebook.com/gotoguesthouse/

1.プロジェクトの目的

本プロジェクトでは、福江島の荒川という集落にある
築88年の古民家ゲストハウスにリノベーションし、
宿泊客だけでなく近所の人や通りすがりの人が
ふらっと立ち寄って交流できる場を作るのが目的です。

ゲストハウスの名前は『ネドコロ ノラ』

プロジェクトオーナー(企画者)は
美大で同級生だったというデザイナーの2人。

デザインを通してのコミュニティ作りに興味を持ち、
五島列島福江島に移住したそうです。

「ヒト コト モノをつなぐ場所」がコンセプトとなっており、
本ゲストハウスを通して若者や島外の人が訪れることにより、
島内の他の施設(温泉、商店街、軽食屋、レジャーショップ、など)と連携して
かつての島の賑わいを取り戻したい・・という想いもあるそうです。

2.資金調達の用途

古民家を宿泊施設にリノベーションするにあたり、
水回りの改修工事など、旅館法にのっとり
水回りの整備をする必要があり(トイレや風呂など)、
その回収工事費の為の資金をクラウドファンディングで調達。

すでにリノベーションの準備は進めており、
リノベーションに必要なすべての資金を調達するのではなく
不足している一部の資金をクラウドファンディングで調達する計画です。

クラウドファンディングにおける
主な資金用途の内訳は以下の通りとなっています。

【資金用途の内訳】
1)水回りの改修工事費:100万円
2)機材設備導入費:70万円
3)クラウドファンディング手数料(*)と、諸経費:30万円

(*)クラウドファンディングの仕組みを利用する際、調達に成功した場合(購入型のケースを想定)に、プロジェクトオーナーは利用したクラウドファンディング運営業者に対して手数料を支払う形になっています。

手数料体系は運営業者ごとに異なりますが、最も多いのは調達額に対する0%〜20%の一定割合をかけたものを手数料とするパターン。本プロジェクトが利用した「Motion Gallery」は調達額の10%が手数料。つまり、200万円の資金が集まった場合は20万円が手数料として支払われる事になります。

このようなクラウドファンディング利用の手数料コンサルティングフィー(外部専門家に業務を一部依頼する等など)については、本プロジェクトのように目標額に必要経費として含めて、クラウドファンディングを行うケースが最近は増える傾向にあります。もしくは、手数料等を目標額に含めず、調達に成功した場合に、別途自己資金から支払う形もあります。

3.リワード設定

リワードには、「ゲストハウスの宿泊券」はもちろんですが、
他にも「ポストカード」「ステッカー」といったノベリティーグッズから、
「海産物」「和菓子」「うどん」などの特産品まで、
様々な趣向を凝らしたリワードが設定されています。

以下は、支援額別リワードの種類・内容と支援数内訳の一覧です。

支援額 (種類) リワード(もらえる特典) 支援者数 数量限定
3,000円 A. 現地に
来られる方向け
i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(1種類)
iv. 宿泊半額券(1人1泊まで)
18人 無し
B. 現地に
来られない方向け
i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
10人 無し
5,000円 A. 現地に
来られる方向け
i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
iv. 無料宿泊券(1泊)
v. 福江島マップ
32人 無し
B. 現地に
来られない方向け
i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
iv. かんころもち(1種類)
v. 米(ヒノヒカリ)300g
30人 35人
10,000円 A. 現地に
来られる方向け
i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
iv. 無料宿泊券(3泊)
v. 福江島マップ
vi. つばき茶(10パック)
23人 25人
B. 現地に
来られない方向け
i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
iv. かんころもち(1種類)
v. 米(ミルキークィーン)300g
vi. 食用つばき油
18人 25人
30,000円 A. 現地に
来られる方向け
i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
iv. 無料宿泊券(5泊)
v. 福江島マップ
vi. つばき茶(10パック)
vii. 湯最中(5個)
viii. 米(ヒノヒカリ)300g
ix. かまぼこ詰め合わせ(3,000円分)
5人 5人
B. 現地に
来られない方向け
i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
iv. かんころもち(1種類)
v. 米(ヒノヒカリ)300g
vi. 米(ミルキークィーン)300g
vii. 食用つばき油
viii. かまぼこ詰め合わせ(3,000円分)
5人 5人
C. 現地を堪能したい方向け i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
iv. 福江島マップ
v. 無料宿泊券(2泊 x 2人)
vi. アスパラ収穫体験
vii. レンタカー乗車割引
2人 5人
50,000円 A. 現地に
来られる方向け
i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
iv. 無料宿泊券(7泊)
v. 福江島マップ
vi. つばき茶(10パック)
vii. 湯最中(5個)
viii. 米(ミルキークィーン)300g
ix. 美容 つばき油
x. かまぼこ詰め合わせ(3,000円分)
2人 2人
B. 現地に
来られない方向け
i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
iv. かんころもち(2種類)
v. 米(ヒノヒカリ)300g
vi. 米(ミルキークィーン)300g
vii. 食用つばき油
viii. 美容つばき油
ix. 五島うどん
x. かまぼこ詰め合わせ(3,000円分)
2人 2人
55,510円 C. 現地を堪能したい方向け i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
iv. 福江島マップ
v. 無料宿泊券(1ヶ月)
vi. レンタカー乗車割引
vii. プロジェクトオーナーと福江島巡り
viii. つばき茶(10パック)
ix. 湯最中(5個)
2人 2人
100,000円 A. 現地に
来られる方向け
i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
iv. 無料宿泊券(13泊)
v. 福江島マップ
vi. レンタカー乗車割引
vii. プロジェクトオーナーと福江島巡り
viii. つばき茶(21パック)
ix. 湯最中(5個)
x. 米(ヒノヒカリ)300g
xi. 米(ミルキークィーン)300g
xii. 美容 つばき油
xiii. 五島うどん
xiv. かまぼこ詰め合わせ(3,000円分)
1人 1人
B. 現地に
来られない方向け
i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
iv. かんころもち(3種類)
v. 米(ヒノヒカリ)300g
vi. 米(ミルキークィーン)300g
vii. 食用 つばき油
viii. 美容 つばき油
ix. 五島うどん
x. つばき茶(21パック)
xi. 湯最中(5個)
xii. かまぼこ詰め合わせ(3,000円分)
1人 1人
300,000円 A. 現地に
来られる方向け
i. お礼の手紙
ii. ステッカー
iii. ポストカード(3種類)
iv. 無料宿泊券(1年間)
v. 福江島マップ
vi. レンタカー乗車割引
vii. プロジェクトオーナーと福江島巡り
viii. つばき茶(21パック)
ix. 湯最中(5個)
x. 米(ヒノヒカリ)300g
xi. 米(ミルキークィーン)300g
xii. 美容 つばき油
xiii. 五島うどん
xiv.かんころもち(3種類)
xv. 食用 つばき油
xvi. かまぼこ詰め合わせ(10,000円分 x 2回)
1人 1人

4.募集開始から資金調達達成までの流れ

本プロジェクトは、2015年12月に募集開始、
2016年2月末に総支援額2,159,353円を集め(目標の107%)、
クラウドファンディングのプロジェクトとして、めでたく成功しています。

運営サイトのプロジェクトページ内にある「アップデート」では、
プロジェクトオーナーや関係者の情報や、
リターンのより詳しい紹介などが投稿されています。

【参考】リターン紹介記事の例
https://motion-gallery.net/projects/gotoguesthouse/updates/10192
https://motion-gallery.net/projects/gotoguesthouse/updates/10217
https://motion-gallery.net/projects/gotoguesthouse/updates/10277

また、長崎新聞でプロジェクトに関する記事が載った事もあったようです。

【参考】長崎新聞に紹介された際の「アップデート」記事
https://motion-gallery.net/projects/gotoguesthouse/updates/10489

5.支援者について

支援者(Motion Galleryでは”コレクター”とよびますが)は
総計で151口集まっています。

Motion Galleryでは、プロジェクトへ支援する際に
プロジェクトオーナーへのコメントを添える事ができ、
その内容はプロジェクトの「コレクター」ページから誰でも確認できます。

その内容を見ると、全員がコメントを書いているわけではないのですが、
公開されているコメントを見る限りでは
以下のような支援者が見受けられました。

(1) 以前からの知り合いと思われる方からのコメントが全151名中約34
 (コメントが比較的フランク、友人や親戚など?)
(2) 知り合いではないが、島の出身者と思われる方からのコメントが全151名中約18
 (「福江島出身なので応援しています」「毎年帰省しています」など)

また、各支援者のコメントには支援者の居住地も記載されていて、
それを見ると東京都在住者が全151名中約135名と圧倒的に多かった・・のですが、
Motion Galleryの場合、各支援者が自分で居住地域を設定しないと
自動で「東京都在住」扱いになってしまうので、正確な数字は不明です。

しかし、各リワードの支援者数を見ると
「現地に来られる人」「現地に来られない人」ともに満遍なく支援が集まっているので、
遠方に住んでいる方からの支援が多くあった、と考えられます。

 

B. 本プロジェクトの目標額達・成功ポイント

本プロジェクトが目標金額の資金調達に成功する上で、
特に成功の要因となったポイントについてピックアップしてみました。

その1:遠方の支援者にも配慮したリワード設定

本プロジェクトでは、リワードの支援金額ごとに
「ノラ(ゲストハウスの名前)に泊まりたい方向け」
「泊まれない人向け」
という2種類の内容を用意しているメニューが多いです。

「ノラに泊まりたい方向け」
は、その名の通り現地に来てゲストハウスに泊まりたい方向け。
このリワード設定では、宿泊に関する特典(宿泊半額券、1〜数泊無料券、など)が必ず設定されており、
それに加えてノベリティーや特産物などの特典が付いてきます。

また支援金額によっては、
「福江島マップ」「オーナーと福江島めぐり」「レンタカー割引券」
など、現地の福江島を満喫できる特典も用意されています。

そして「泊まれない人向け・・五島は遠いな・・と思う人向け」には、
遠方に住んでいて、現地ゲストハウスまでは行けないが支援はしたい、という方向け。
こちらは宿泊に関する特典が無い分、特産物などの特典が多くなっています。

特に今回のような
「現地に行けないと体験できない」ものを作るプロジェクトの場合、
現地でのみ体験できる特典にしてしまうと
遠方にいて、現地に赴けない人にとっては、
「支援したいけれど、支援したいリワードメニューがない!」
または・・、
「支援してリワードを貰ってもどうせ行けないし、やめておこう」となってしまいます。

本プロジェクトでも、結果として「ノラに泊まりたい方向け」
「泊まれない方向け(五島は遠いな・・)」のいずれも同じくらいの支援者が集まっています。
同じ支援額で、遠方の支援者も損しないリワード設定を別途用意することで、
より多くの支援者を得ることが可能となります。

その2:必要資金の一部のみをクラウドファンディングで調達

本プロジェクトは、
古民家のリノベーションに必要なすべての費用を調達しようとするのではなく、
一部の資金のみを調達することを目的としています。

何かプロジェクトを実施するにあたり、
すべての資金をクラウドファンディングで調達することは、
ハードルが高いですし、万一目標金額に届かなかった場合のリスクも発生します。

逆に、一部のみでもクラウドファンディングで資金調達することにより、
知名度アップや顧客獲得などのPR/集客効果が期待できるようになります。

クラウドファンディングを活用する以外に、
自己資金もしくは補助金・助成金・金融機関からの借入などを組み合わせ
資金調達するケースも最近増えてきていますので、
ぜひ参考にしてみてください。

その3:各リワードの支援上限数を設定

支援金額のリワードが5,000円以上のメニューには、
支援上限数が設けられています。
例えば10万円や30万円のリワードは1名まで、1万円のリワードは25名まで、などです。

リワードの内容により
いくつまでしか用意できない、など制約がある場合、
こうした上限を意図的に設けることにより
「早めに申し込まないといけない」という心理が働き、
結果的に早い段階で支援金額を集めることができます。

 

C. その他、注目すべきポイント

ここでは、上記に述べた成功要因以外に、
クラウドファンディング・プロジェクトとしてユニークな点や
注目・特筆すべきポイントなどを解説します。

その1:活動報告ページの積極的な活用

Motion Gallery のプロジェクトページには
「アップデート」というページが設置されており、
ここにはブログのようにプロジェクトオーナーが
日々記事を投稿できるようになっています。

基本的にはプロジェクトの進捗状況や支援状況を定期的に投稿していくのですが、
本プロジェクトではそれ以外にも、
各リワードの内容をより詳しく解説した記事なども投稿しています。

本プロジェクトの場合は、リワードに設定されている特産物の紹介なども行なうことで、
プロジェクトページ右のリワード記載エリアには書ききれない内容を捕捉できています。

また、定期的に記事を投稿することで
Motion GalleryのTOPページやGoogle検索で新たに知られるきっかけが増え、
SNSでのシェアやプロジェクトへの支援につながる可能性もアップします。

活動報告のページは、
たいていのクラウドファンディング運営サイトで用意されていますので、
「プロジェクトの募集が始まってからどのような活動報告を投稿していくか?」を
予め考えておくことが重要なポイントです。

その2:地元メディアでの紹介

上の『その1』にも関連しますが、
活動報告ページの中で「長崎新聞に記事で大きく紹介された」とありました。
特に今回のような地域密着型プロジェクトの場合、
地元住民の支援を集める上で、
地元メディア(新聞・テレビ・ラジオ・雑誌など)の影響力は頭に入れておくべきポイントです。

インターネットを普段あまり利用しない方たちが、
地元メディアでの露出をきっかけに
プロジェクトやクラウドファンディングという仕組みのことを知り、
一気に支援が増える・・というケースは多くあるようです。

活動報告やその他を通して、
どうすれば地元メディアに取り上げてもらえるのかを考えていくのも、
大きく支援者数を伸ばすポイントになります。

その3:知り合いへの積極的な支援依頼

各支援者からのコメントを見ると、
友人や知り合いと思われる方からの支援も見られました。
クラウドファンディング・プロジェクトを実施する上でよく言われるのは
「少なくとも目標支援金額の20〜30%くらいは自力で集められるくらいを目指そう」というものです。

クラウドファンディングも魔法のツールではないので、
身近な知り合いからすら支援を得られない(=共感されない)プロジェクトは、
クラウドファンディングを実施したとしても、始め(短期間)に20~30%すら達成できない・・・
すなわち、成功しづらいと言えます。

本プロジェクトでも、支援者のコメントを見ると
友人や親戚と思われる方からの支援が全151名中約34名(全体の約22%)いらっしゃいました。
(コメントを書いていない方もいると思うので、人数はさらに多いかもしれません)

プロジェクトの募集を始める前に、
身近な友人や知り合いへ積極的に声を掛けていくことも、
欠かせない準備です。

D. まとめ

以上、離島のゲストハウス開設に関する
プロジェクト事例をご紹介しました。

最近色んなクラウドファンディング・サイトで
日本各地の離島に関するプロジェクトをよく見かけるようになってきました。

離島の活性化、島おこしなどを考えている方も、ぜひ参考にしてみてください。

(当ラボでも随時ご相談を受け付けています。ご希望の方はお問合せページよりどうぞ)

(参考)国内の離島に関するプロジェクト(保全・観光・イベント)などのクラウドファンディング事例まとめ

当ラボが定期的にまとめ記事を掲載している
『NAVERまとめ』サイトでも、

「島」に関するクラウドファンディング・プロジェクト事例をまとめています。

「島」 x クラウドファンディングで!保全・観光・イベントなど、様々な島関連の事例48選まとめ

是非、こちらも参考にしてみてください!

 

【END】<著者:おるず>

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