クラウドファンディングで本出版! 料理の本「LIVE 」出版プロジェクト

クラウドファンディング・ラボラトリでは
ユニークなクラウドファンディング・プロジェクト(案件)を
(主観的にではありますが)ピックアップ。

『一押しプロジェクト事例集』として、ご紹介しています。

今回は様々な分野の人が集まって
「器と料理に関する本」を出版するというプロジェクト。

調達金額を見ると、
当初設定した目標金額までは達成しなかったようですが、
掲載したクラウドファンディング運営サイト「Motion Gallery」では
目標金額を達成するしないに問わず
「集まった金額だけ資金を獲得できる」
方式も可能。

クラウドファンディング運営サイトの多くは、
目標金額まで到達しないと資金を獲得できない
「All or Nothing方式」を採用している中で、
本プロジェクトは、集まった分の資金獲得に成功しています。

こうした目標達成額の設定方法をどうするか・・も含めて、ぜひご参考に。

【事例第9号】
プロジェクト概要

「To eat is to live.
 誰も見たことのない器と料理の本『LIVE』」 出版プロジェクト

https://motion-gallery.net/projects/utsuwalive

国/都道府県 国内/東京
運営サイト MotionGallery
調達型 購入型
業界/セクター 出版/陶芸/料理
掲載時期 2015年4月頃
目標設定額/達成金額/支援者数 2,400,000円 / 935,400円 / 99人
リワードの金額範囲 1,000円~100,000円
プロジェクトオーナー関連サイト http://utsuwalive.jp/home.html

1.プロジェクトの目的

プロジェクトオーナーは
「LIVE 器と料理」という名のプロジェクトチーム。

器作家、料理人、写真、デザイナ、
プランナー、ギャラリスト・・といった
異なるフィールドで活動している人たちが集まり、
料理と器の写真を2年間で約6,000枚撮り続けています。

その集大成として、これまで撮ってきた写真を元に
「器と料理」というテーマで本を出版するのが、
本クラウドファンディングプロジェクトの目的です。

ただの写真集ではなく、
料理や器の作り手自身が出版プロジェクトに参加し
それぞれの視点から想いを語る本。

書籍は、B5サイズ/計128ページの上製本で
すでに青幻舎から刊行される事が決まっており、
クラウドファンディングでは本出版の準備資金調達というよりも、
刊行に向けての「本の認知度アップ」と「宣伝」
そして、「本の完成を見守ってくれる」コアなファンを増やす事が
目的となっている様子。

2.資金調達の用途

調達資金は、

・出版費
・完成披露会の運営費
・チラシの制作・印刷費
・国内外での出版記念巡回展に必要な費用

などに利用されるとのこと。

今回の事例を見てみると・・・
本出版の為のクラウドファンディングではよくお見かけする
自費出版の為の資金調達のケースとちょっと異なります。
自費出版プロジェクトをゼロから立ち上げる場合、本出版に向けての
準備資金と出版費用(執筆・取材・編集・製本・印刷等に係るコスト)
を調達するようなクラウドファンディング・プロジェクトがほとんど・・・

それと、今回の事例とを比較すると・・・
上述したとおり、すでに出版は出版社から決まっているので、
準備資金や出版に係る直接的なコストではなく
「本の認知度アップ」と「宣伝」活動の為の資金、
そして、「コアなファン」を増やす為の費用が資金の用途になっています。

3.リワード設定

リワードに関しては、

・ 支援者限定メールマガジン(編集や印刷の過程などを随時配信)
・ 完成書籍のプレゼント
・ 出版記念イベントへの参加
といった出版関連の内容の他、

ユニークなリワードとしては、
最高額(100,000円)の支援者に、
・「作り手3人からの器プレゼント」も用意されています。

本プロジェクトの成功ポイント

その1:購入見込みの顧客層に支援してもらう事で、
調達資金だけではない・・・本出版本来の目的を達成

本プロジェクトは、すでに出版社で書籍販売する事が決まった上で
クラウドファンディングをプロジェクト化しています。

クラウドファンディング、と聞くと
「まったく新しい商品をこれから開発する」ための資金調達に
利用するもの、というイメージが強いかもしれませんが・・。

本事例のように予め完成書籍のイメージがある程度決まっているものでも、
単に出版するのではなく、クラウドファンディングを活用する事で、
本出版本来の目的を、以下のような形でより広く達成することが
可能ではないかと思います。

1)クラウドファンディングで資金調達した例として、
ネット上(その他メディアなど)で話題になる
2)本を「購入」する代わりに「支援」してもらう形にする事で、
口コミなどの広がりが生まれる

特に2)が重要で、
本プロジェクトの内容を発見し「この本、欲しい!」と思った方に
本出版のタイミングを待ってそれぞれ本屋やネットで探して
「購入」してもらう代わりに、プロジェクトを「支援」してもらうタイミングで、
ファンや支援者が、本出版以前の段階から周囲に口コミや宣伝をしてもらうことで、広がりが生まれます。

また、プロジェクトオーナー側としてはさらに、
出版のタイミングよりも以前に、書籍を買ってくれそうな層の人が
「支援」してくれてることを把握できるので、本の反響や、
プロジェクトの目標達成に必要な金額をある程度、事前に見込む事ができます。

お金を出す支援者側としての心理も、
単に本屋などで購入するのとは異なり、
その2でも書いていますが「特別感」「関わり感」
「自分がこのプロジェクトを支援したんだ」という意識が生まれ、
本やプロジェクトに愛着が沸きます。

もちろん、口コミで本を広めてくれる可能性も。

その2:価値のある非公開情報をリワードに設定

プロジェクトの製作過程が見られるというのは、
本出版プロジェクトだけに限らず、製作系の業界では、
通常はスタッフしか見られないような非公開情報など、
ファンからすると価値があるものです。

本プロジェクトでは、最初支援額の1,000円から
この「制作過程」を随時確認できるメルマガを受け取る事ができます。

こうした、特定の対象者にとっては価値のある情報をリワードとする場合、
プロジェクトオーナー側からしても
何かモノを作って(1つ1つにコストがかかる)リワードにするより
情報を有効活用して、コストかけずに資金調達できるのがメリット。

特に今回はコンテンツがデジタル情報なので、
1つ(メール1通)作れば同じものを支援者全員に届けられるのが、
コストをかけずに・・というメリットになります。

その3:写真を使った効果的な見せ方

クラウドファンディング運営サイトに
掲載されているプロジェクトの概要説明・・・
目を惹く魅力的な写真がふんだんに使われています。

それは・・・
本プロジェクトに写真家さんが関わっている事もあり、
随所に素敵な写真が散りばめられていると、
全て文章のみで書かれているより読んでみたくなる気持ちにさせられます。

特に全体が長めのWebページは、とりあえずどんなものか見てみようと
「まずページ全体を最後までスクロールしてみる」訪問者も多いですが・・
その場合、文章びっちりあるよりも、ビジュアルに訴える目を惹く写真が多いと、
ざっとページを眺めてから、その後じっくり、文章を読んでみるか!となります。

では、写真が多ければいいのかというと、
いかにも素人っぽい写真だけだと、逆に・・・
プロジェクトの魅力も伝わらず、素人レベルか・・という感覚で
プロジェクト自体の信頼度も下がってしまう可能性もあるかと・・。

その点、当プロジェクトでは
プロによる魅力的な写真で、効果的にプロジェクトのストーリーを
見せることで、成功率アップにつながったと言えるでしょう。

このプロジェクトの学びポイント・・

1.コストかけずのリワード設定

リワード設定も、
大抵の場合は用意するのにコストが発生します。

なのでプロジェクトの目標金額は、
開発費や手数料だけでなく、このコストも考慮に入れなければなりません。

本プロジェクトのように、
限定メルマガなどのデジタルコンテンツを活用することで、
リワードに手間と費用をかけない工夫も重要になります。

2.サポーターに価値のある情報の有効活用

サポーターにとっては価値のある、
非公開情報を有効利用する。

これは、特に・・
制作系のプロジェクトをクラウドファンディングで資金調達する場合
ぜひ設定しておきたいリワードの1つです。

3.ビジュアルに訴えるプロジェクトの見せ方

見栄えのする、ビジュアルに訴える、プロジェクトページを作る。

写真は出来る限りプロにお願いするなどして、
見栄え良くする事をオススメします。

身近に居なければ、
クラウドソーシング・サービスなどで探してみることもできるでしょうし・・

また、クラウドファンディング運営サイトによりますが、
コンテンツ作成が運営会社による掲載サポートに含まれる場合や、
プロを紹介してくれたり(有料)することもあるようなので、
事前に、運営会社にまずは相談してみるのも手です。

4.ある程度までプロジェクトを進めておく

ゼロの状態
=プロジェクトのプラン・企画だけの段階(まだまったく始まっていない状態)

の時点から、クラウドファンディングするのではなく、
ある程度すでに形になっているところまで持っていってから、
クラウドファンディングを仕掛ける事ができないか考えてみる事も、
プロジェクト成功の秘訣です。

まとめ

本プロジェクトは、既に出版する事自体が決まっていたため、
「目標に届かなくても集まった資金が獲得できる」方式を取ったのだと思われます。

既に出版する事は決まっているし、出版費用もまかなえているから
自分にクラウドファンディングは関係ないかな・・?

という方でも、出版する本を、もっと効果的に宣伝・販売する手段として、
そして、ファンの方との効果的なコミュニケーションをとる手段としても、
クラウドファンディングが使えるかもしれませんよ!

 

また、我々こらウドファンディング・ラボラトリでは・・
外部のおまとめサイト、「NAVERまとめ」に、
『本、雑誌、フリーペーパー等の出版を考えている方!クラウドファンディング成功事例紹介』
として、本出版系のクラウドファンディング事例を一挙にまとめたものを掲載しています。

http://matome.naver.jp/odai/2143747538219645601

 

合わせて、ぜひ参考にしてみてください。

(by おるず)

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