クラウドファンディング・ラボラトリでは、
クラウドファンディング業界にてご活躍・貢献されていらっしゃる方を、
独自な目線と切り口(?)で、取材・インタビューしています。
インタビュー特集の第1号は・・
国内大手のクラウドファンディング運営会社の1つである
kibidango(きびだんご)社の松崎良太社長に、
2015年6月、お話を聞くことができました。
kibidangoの運営を始めたきっかけから、ビジネスに対する哲学、
今後の取り組みなど、普段はなかなか聴けないお話もあり・・・
ポイントを以下にまとめてみました。
きびだんご社 松崎良太社長
ソーシャルファイナンス研究所主催『グローカル・クラウドファンディング研究会』開催時撮影
(2015年5月29日@新宿)
1) なぜクラウドファンディングを?
松崎社長がクラウドファンディングに興味を持ったのは、
Kickstarter(米国のクラウドファンディング運営会社最大手)が
きっかけだったそうです。
前々職(楽天)から独立した後に行なっていたコンサルティング業務でも、
一番ワクワクしたのがスタートアップ系のプロジェクト。
きびだんご社創業前の2012年はじめには、
Kickstarterの創業者にも直接会いに行かれたとか。
自分もECサイトの経験を生かしたクラウドファンディングサービスを始めたい、という話をしたら・・
「Kickstarterはプロデューサーやアーティスト視点のサービスなので、ECサイト的な仕組みを軸にするアイデアは面白いね」
と後押しされました。それがECサイトと組み合わせて運営を始めたきっかけです。
- きびだんご社 松崎社長
2) 運営サイト名「kibidango」の由来
「桃太郎」という、日本人なら誰でも知っている昔話。
桃太郎は、おばあさんからきびだんごを貰い、
途中イヌ・サル・キジに与えて家来に従え、鬼ヶ島の鬼を退治。
鬼が奪っていた財宝を持って帰ってくるというお話です。
「次々と仲間を増やしながら目標に向かっていく」ストーリーが、
クラウドファンディングの仕組みに似ている事もあり、
kibidango【きびだんご】というネーミングに決定したそうです。
が・・!実はリリース直前まで、別の有力候補名があったそうで・・
元々は「きびだんご」ではなく、別の名称を考えていました。
しかし、もう間もなくサービスが稼働する時期に、運営メンバーの1人から「あれ、運営サイト名って何でしたっけ?」と聞かれたんです。
運営メンバーでも覚えづらい運営サイト名は、きっと、ユーザーの方にもなかなか認知されないだろうと思い、名称変更する事にしました。
「きびだんご」という名前自体はそんな時、運営に協力してくれていたパートナーさんからの提案でした。
- きびだんご社 松崎社長
3) ビジネス哲学とワクワク感
「きびだんご」社(いや、松崎社長?)ならではの
モットーやこだわりについて、お聞きしました。
i. ワクワク感
松崎社長とお話していると、
「ワクワク」
という言葉が頻出!それがビジネスのキーワードになっている様子。
松崎社長がおっしゃられていたのは、
「投資型やファンド型のクラウドファンディングとは別のものにしたい」という点。
※ クラウドファンディングの形態については、下の過去ブログ記事もご参考に。
寄付型、購入型、投資型・・報酬形態で
4種類に分類されるクラウドファンディング(原則編)
ファンド系や投資型の場合、支援者がより収益を目的とした投資家目線
(=プロジェクトが収益を生むかどうか?のみで
投資・支援の判断する)になりがちです。
が、儲かる・儲からないだけではなく・・
支援者自身がそのプロジェクトから生み出されるモノが欲しい!
その体験してみたい!
といった利用者・消費者目線で、
資金を提供してからプロジェクトが本当に成功するのかを、
(=製品を実際に、手にできる、利用できる)
一緒にワクワクしながら応援する。
まさにそんなワクワクする新しい買い物体験が、
kibidango(きびだんご)の目指している所。
kibidango(きびだんご)は、「お金を投資したり、預けたりする場所」ではありません。
支援をしても、お金は戻ってきません。支援をすることで得られるのはモノやサービス、体験やワクワク感といった「等価交換としての価値」です。
また、kibidango(きびだんご)は「寄付をする場所」ではありません。「自分自身がワクワクできるモノやコト」の実現のためにお金を出して協力する場所です。
「単なる物販ではない、新しい買い物体験を提供するサービス」を目指しています。
– きびだんごとは? (kibi-dango.jpより引用)
ii. 業界平均よりも低い手数料(10%)
きびだんご社では、プロジェクト成立時に
調達額(達成額)の10%を手数料として請求する仕組み。
これは国内大手クラウドファンディング運営サイトの中でも、
かなり低い水準の手数料体系です。
(ちなみに、国内では調達額の15%~20%が主流)
これは、自社スタッフがキュレーター(*)になるのではなく、
外部・周囲のキュレーターと協力しやすい環境を作る事で、
より幅広い活動ができるようにしたいという想いがあるようです。
(*) キュレーターとは、元来博物館や美術館業界用語で、
美術館等で「研究・収集・展示・保存・管理などを行う役の人。学芸員。」の意。
クラウドファンディング業界のキュレーターは、そこから派生し、
「クラウドファンディング案件を発掘・企画し、
プロジェクトとして立案コーディネートする」といった意味合いで使われています。
ちなみに、運営サイト社内に、
キュレーターという立場のスタッフを抱えているところもあります。
私たちは、自分たちを「キュレーター」とは考えていません。
「きびだんご」としてはECサイトも兼ねたプラットフォームとして用意し、周囲のキュレーターと協力してより良いプロジェクトを集めていきたい。
そうした理由で、現在の手数料体系になっています。
- きびだんご社 松崎社長
iii. EC販売までの一貫したサポート
さらにkibidangoでは資金調達だけでなく、
EC販売のサポートも行なっています。
(同サイト内に「ショッピング」用ページが用意され、
kibidangoで資金調達に成功した商品が販売されています。)
入口の資金調達時における手数料を低く抑え、
調達に成功したプロジェクトがさらに成長できるように
EC販売のサポートまで行なう・・
ともに成長・成功を目指す!という想いが、
手数料体系にも反映されているようです。
4) 業界についての想い
i. 「クラウドファンディング」という言葉の認知度
松崎社長は、
「クラウドファンディングという言葉の定義の広さ」を挙げられていました。
松崎社長はもともと、金融業界ご出身で資金調達のプロ。
クラウドファンディングでは、ファンディング(資金調達)といっても、
お金を集めるという行為全般が含まれるので、
元来の金融取引とは言えない取引や行為も含まれます。
(たとえば「ファンドレイジング」と言われる寄付や募金の行為も、
資金調達=クラウドファンディングの一部とされてます)
クラウドファンディングという業界は、金融業界と比較して
まだまだスタートしたばかり・・・。
プロジェクトの資金を調達したい方も、支援したい方も、
もっとクラウドファンディングに関する理解を深めてもらうのは、
業界全体の課題・・・というところで、共感。
ii. クラウドファンディングに適したプロジェクト
また、「クラウドファンディングは万人向けのサービスではない」という指摘も。
資金調達を目指すプロジェクトオーナー自身の気持ちが入っていなかったり、
支援者を巻き込むという形をとらず、
一方的にプロジェクトをサイトに掲載して支援を待つケースやら・・
支援者を無視したようなプロジェクトだったり・・
一緒にワクワクしながら取り組めなければ、失敗するケースも多いとの事でした。
5) 現在の取り組み
きびだんご社では現在、
他社にはない新たな資金決済手段を導入開始したところです。
さすが、金融業界ご出身の松崎社長。
金融業界では、資金調達時の決済リスクやコストは重要視されるポイントですが、
まだ発展途上のクラウドファンディング業界では、そのあたりは見逃がされがち。
その、決済コストやリスクを軽減するような
新たなサービス提供を追及されているという、非常に興味深いお話でした。
※ 本インタビュー後の6月12日に、
決済サービス「Paidy(ペイディー)」の導入が発表されました!
http://corp.kibi-dango.jp/press_release/345.html
このサービスは、プロジェクト支援時に
メールアドレスと携帯電話番号で認証を行なう事で、
プロジェクト成立後にコンビニや銀行振込で決済を行うことができる仕組みです。
これにより、プロジェクトの支援側は
クレジットカードを利用しなくても、支援しやすくなりますし、
クラウドファンディングサイト運営側も不成立時の返金処理が楽になります(*)。
(*)従来、銀行振込で資金の決済をした場合、
プロジェクト目標額が達成せず不成立になると
一旦払い込まれた調達資金を各支援者へ手動で返金する必要がありました。
「Paidy(ペイディー)」の導入は、
クラウドファンディング業界ではkibidangoが国内初。
今後の動向にも、要注目です!
6)所感 & おまけ話
以上、取材特集第1号、
きびだんご社の松崎社長のストーリーはいかがだったでしょうか?
今回お話をお聞きして、
クラウドファンディングという言葉の定義について・・など
我々クラウドファンディング・ラボラトリでも
情報発信を開始するにあたり、同じことを感じ、
今回、あらためてその指摘を聞き、大きくうなづいてしまいました。
松崎社長はもともと、
金融業界ご出身で資金調達のプロ。
同じクラウドファンディング(=多数からお金を調達する)といっても・・
「寄付型(ファンドレイシング系)」のように
見返り無しの寄付や募金による方法もあれば、
「購入型」のように
将来のサービス・製品の対価として、前払いする類のもの
(金融的に考えれば、将来のキャッシュフローを当て込んだ資金調達)
また「投資型/ファンド型」など、
より従来の株式や投資信託に近い類のものもあります。
※ 再掲ですが、以下の記事もご参考に。
寄付型、購入型、投資型・・報酬形態で
4種類に分類されるクラウドファンディング(原則編)
我々が危惧するのは、
ファンディングという仕組みの誤解・乱用・誤用。
クラウドファンディングなら、万が一資金が集まらなくても
コストがかからないから何でもあり!ってことで・・・
- 資金調達ではなく宣伝利用や単なる製品販売だけが目的
- 資金の用途が明確でない
- 目的額を調達した後のプロジェクトの達成能力についてが微妙
・・といった類のプロジェクトが、最近特に目につくようになりました。
運営サイト社ですらそのあたりをしっかり選別することなく
プロジェクト掲載する本数を増やすことが優先になってるのでは?
と思えるようなサイトもあることは、残念ながら現状です。
その点、きびだんご社は社長の想いと哲学に基づき、
自社の扱うクラウドファンディングのプロジェクトを、
社長・スタッフそして、オーナー・支援者が一緒になってワクワク感を共有。
プロジェクトの資金調達のみならず、
目標金額に達した後も、プロジェクト自体の成功へ、
プロジェクトオーナーと共に成功へと歩む姿勢・・
そのビジネスモデルには、大いに共感いたしました。
尚、おまけ話として・・・今回のインタビューは、
東京 恵比寿駅近くの「ウルトラチョップ」というお店で行われました。
(ウルトラチョップ 恵比寿店)クラウドファンディング・ラボラトリ撮影 2015年6月
実はこのお店、kibidangoで
「レトルトカレーの自社開発&販売」というプロジェクトを立ち上げ、
目玉商品ラム・カレーのレトルトパック化の開発資金を調達。
めでたく商品化に成功した実績があります。
【ご参考までにプロジェクト掲載サイトはこちら ↓ 】
持ち帰りたい!という顧客の声続出。
中目黒発祥隠れ家バルの看板メニューを多くの方に!
オーナーの熱い思いがたぎるレトルトカレープロジェクト!
(kibi-dango.jpより引用)
松崎社長は、EC業界ご出身という事もあり、
「物販体験をクラウドファンディングでもっとワクワクさせる」という視点に、
他のクラウドファンディング運営サイトとは異なる、ビジネス哲学を感じました。
今後も、きびだんご社から生まれる、
ワクワクするプロジェクトに注目したいですね!
取材先概要 【きびだんご株式会社】
きびだんご株式会社(Kibidango, Inc.)
東京都目黒区 2013年設立
事業内容 クラウドファンディング型EC事業
http://kibi-dango.jp/
代表取締役 松崎 良太