日本酒を「米」から一緒に作る!開発参加型のクラウドファンディング成功事例(島根県)

クラウドファンディング・ラボラトリでは
ユニークなクラウドファンディング・プロジェクト(案件)を
(主観的にではありますが)ピックアップ。

『一押しプロジェクト事例集』として、ご紹介しています。

今回の事例は、島根県にある創業150年の酒蔵で
5,000本の日本酒を作るプロジェクト

本プロジェクトの最もユニークな点は、
完成した製品(例えば日本酒)が
単にリターン(お返し)として支援者に提供される・・だけではなく、
日本酒を製造する過程や、さらにはそれ以前の「田植え」段階から
支援者と一緒に製品を作っていく体験型のプロジェクトであるという点です。

プロジェクトオーナーさんはこうした仕組みを
「クラウド・プロダクティング」と呼んでいるようですが、
群衆(クラウド)による資金調達(ファンディング)を超えた、
製品化(プロダクト化)ということなのでしょう!

製品開発の取り組みとしてもユニークな事例ですので、
これから類似のプロジェクトで資金調達される方は、ぜひご参考に。

【事例第12号】プロジェクト概要

世界初?! 500人で田植えから、
新しい日本酒5,000本を老舗酒蔵で造る!

https://www.makuake.com/project/sakesupporters/

国/都道府県 国内/島根
運営サイト MAKUAKE
調達型 購入型
業界/セクター 日本酒
掲載時期 2015年春頃
目標設定額/達成金額/支援者数 1,000,000円 / 2,377,000円 / 153人
リワードの金額範囲 5,000円〜500,000円
プロジェクトオーナー関連サイト 公式サイト
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1.プロジェクトの目的

本プロジェクトのオーナーは、
日本酒を応援する有志で結成された「日本酒応援団」。

従来、作るのが難しいと言われている「純米・無濾過生原酒」を
島根県で150年続く酒蔵「竹下本店」にて、
5,000本製造するのが目的です。

しかも、単に酒の製造行程を支援するプロジェクトではなく
日本酒の原料である米を、「田植え」の段階から作るプロジェクト。
本プロジェクトの支援者(サポーター)を現地に招き、
一緒に米から酒を作る体験をしてもらう・・という企画です。

ちなみに、プロジェクトオーナーの「日本酒応援団」 では
2015年1月に同様のプロジェクトを開催していますが、
その際はクラウドファンディングを活用しておらず、
内容も日本酒の製造のみ(田植え体験は無し)だったようです。

プロジェクトの成功の先には
「生酒を海外に広めていきたい」という想いもあるようです。

2.資金調達の用途

クラウドファンディングで調達した資金は、
日本酒造りに必要な経費や、支援者へのお返し(リワード)に必要な経費など、
以下の用途で利用されます。

1)原材料(酒米のイネなど)の仕入費
2)米作りや酒造りなどに必要な各種機材費
3)瓶やラベルなどの仕入費
4)体験イベントを開催するための宿泊費、食費、人件費

3.リワード設定

リワード設定には、趣向を凝らし、
大きく分けて以下の2種類が設定されています。

1.実際、現地の酒蔵へ宿泊し酒造り体験ができる「体験系」リワード
2.完成した製品や既存の製品がもらえる「モノ系」リワード

リワードの種類と、支援額、支援者数(募集終了時の結果)については、
以下の表にまとめてみました。

支援額 リワード(もらえる特典) 支援者数 数量限定
5,000円 i. Webサイトに名前を掲載
ii. オリジナルステッカー
iii. 製造済の日本酒ボトル(720ml瓶) x 2本
38人 無制限
6,500円 i. Webサイトに名前を掲載
ii. 1泊2日の米作り&酒造り体験(宿泊費、3食の食事代、夕食時の日本酒代、体験参加費、全て込み)
28人 無制限
7,000円 i. Webサイトに名前を掲載
ii. オリジナルステッカー
iii. 製造済の日本酒ボトル(720ml瓶) x 2本
iv. 本プロジェクトで完成する日本酒ボトル(720ml瓶) x 1本
15人 無制限
10,000円 i. Webサイトに名前を掲載
ii. オリジナルステッカー
iii. 製造済の日本酒ボトル(720ml瓶) x 3本
iv. 本プロジェクトで完成する日本酒ボトル(720ml瓶) x 2本
22人 無制限
10,000円 i. Webサイトに名前を掲載
ii. オリジナルステッカー
iii. 製造済の日本酒ボトル(720ml瓶) x 3本
iv. 新酒発表会(東京)への無料招待(6,000円相当)
10人 50人まで
12,000円 i. Webサイトに名前を掲載
ii. 2泊3日の米作り&酒造り体験(宿泊費、6食の食事代、夕食時の日本酒代、体験参加費、全て込み)
iii. 製造済の日本酒ボトル(720ml瓶) x 3本
25人 25人まで
15,000円 (上と同じ) 12人  (無制限)
50,000円 i. Webサイトに名前を掲載
ii. オリジナルステッカー
iii. 製造済の日本酒ボトル(720ml瓶) x 5本
iv. 本プロジェクトで完成する日本酒ボトル(720ml瓶) x 5本
0人 20人まで
100,000円 i. Webサイトに名前を掲載
ii. パンフレット(5,000部)に名前・企業名を記載
iii. 製造済の日本酒ボトル(720ml瓶) x 10本
iv. 本プロジェクトで完成する日本酒ボトル(720ml瓶) x 10本
1人 10人まで
500,000円 i. Webサイトに名前を掲載
ii. パンフレット(5,000部)に名前・企業名を記載
iii. 酒蔵本店に名前・企業名を掲載
iii. 製造済の日本酒ボトル(720ml瓶) x 10本
iv. 本プロジェクトで完成する日本酒ボトル(720ml瓶) x 10本
2人 5人まで

4. 募集開始から資金調達成功までの流れ

当プロジェクトが掲載された、
MAKUAKE(クラウドファンディング・運営サイト)の
プロジェクト内に併設されている
コミュニケーションページ」を見ると、
募集から1ヶ月以内には目標金額の50%を達成しているようです(*)。

(*)各投稿が「●か月前」としか表示されていないので
正確な日付は不明・・

本プロジェクトの成功ポイント

その1:リワード設定(製品と体験)

体験イベントと製品提供の組み合わせ

体験イベントに参加できるという、体験系リワードに加え、
「完成品がもらえる」モノ系リワードを
多数用意しており、どちらにも支援者が集まっています。

酒系のクラウドファンディング・プロジェクトの場合、
よくあるケースとして
完成した製品をリワードとして提供するパターンが多いのですが、
本プロジェクトではこの体験イベントがあることで、
日本酒造りに興味のある支援者を巻き込むことに成功しています。

《→ プロジェクトに、よりコミットする酒ファン層の獲得、
将来の固定顧客層の獲得、参加メンバーを交えたコミュニティーの形成など》

開発段階から参加できるプロジェクトならではの、
体験イベントと製品提供をうまく組み合わせたリワード設定により、
幅広い層から支援者を集める事が可能となっています。

その2:遠方の支援者を意識したリワード設定

体験イベントは島根まで行く必要があるが、
新酒お披露目会は東京で開催、製品はどこでも受け取ることができる

島根での体験イベントに参加できない遠方の人も
様々な形で支援できるリワード設定になっていたため、
広い層からの支援を集めることに成功しています。

特定の場所へ行かなくとも、
遠方でも支援可能なリワードを別途用意する事で
支援者が集まっています。

その3:早期割引をリワード設定に!

内容が全く同じリワードが
2種類設定されている(12,000円と15,000円)

リワードの内容が全く同じなのですが、12,000円は「上限25人まで」という人数制限での設定。
その人数を超えると、15,000円の支援額となります。

つまりこれは、先着25人までは通常の15,000円より
3,000円安い支援額でも、同じ内容のリワードを受け取れる・・
という早期割引の仕組みになっています。

リワード設定で「早期割引制度」を取り入れ、
早期に申し込ませたほうがお得!というインセンティブを導入。

早期割引には、他の事例をみていると、以下の設定手段があります。
① 人数の上限設定(先着○○人まで)
② 期限設定(期限を決めて、○月○日まで)

早期の支援獲得は、
プロジェクト達成を早期に実現させる(人気があるように見せる戦略)戦略であり、
クラウドファンディング運営会社側も、
早期に支援が集まっているということで
人気があるプロジェクトとして認識。
運営サイトでの露出機会も増える仕組みをとるところが多いので、
目的額の達成確率もアップすることになります。

その4:イベントの様子を撮った写真を活用

特に体験型のイベントでは、
自分が体験した様子をイメージできる”写真の存在”が重要

プロジェクトページの内容を見ると、
前回クラウドファンディングを使わず開催した
同様イベントの様子を撮った写真を豊富に活用しています。

この写真イメージがあるおかげで、支援する人たちが
「一体どんな体験イベントになるのか?」がイメージしやすいため、
支援の増加に繋がった可能性が高いです。

参加型イベントは、参加した時の自分がイメージしやすい写真を豊富に使うこと。
また、毎年開催できそうなイベントなら、写真などのコンテンツは積極的に残しておくことが
重要になります。

5.その他、気になるポイントやアイデア

その1:高額リワードの用意

大口の支援者を予め見込んでおくと、
目標金額の達成率が大幅にアップする

50万円のリワードに2人が申し込んでおり、
これだけで目標金額(100万円)を達成しています。

50万円のリワード内容である「酒蔵に企業名を飾る」は、
興味がある人も限られるため、事前に支援してくれそうな人を
確保するという戦略をとる事例も多く見られます。
(当事例では不明ですが・・)

予め大口の支援者候補を確保し、
それ専用のリワードを用意しておく事で、
目標額達成を確実にさせておく・・成功への担保になります。

その2:体験イベントの効果

体験イベントは、長期的なファンの獲得に繋がる!

体験イベントが最も良い点は、「企画者と顔見知りになれる」
「参加者同士でも共有体験ができる人間関係が生まれる」といった人間関係が生まれることです。

こうした人間関係が生まれることで、より参加者は自社製品のファンになり、
定期的に購入してくれるリピーター(固定顧客)になったり、
体験で生まれた人との繋がりが出来て
別プロジェクトを立ち上げる際にも協力してもらえたりします。

単に製品を作って提供するだけでなく、
製造段階から「体験」してもらえる層にアプローチする・・・
長期的なファン獲得に繋がる可能性があります。

その3:著名人の存在を活用

今回のプロジェクトを開催した「竹下本店」は
第74代内閣総理大臣である竹下登元首相の生家

ストーリーとして、著名人の存在は
プロジェクト自体が話題に上りやすい状況があります・・。

元首相の生家がお酒!という意外なところも
話題になる可能性が高く、
リワードの宿泊体験についても
「元首相の生家に泊まってみたい」と思った方が
支援者の中には居たかもしれません。

体験系のリワードを設定する場合は、
開催する場所の知名度や特殊性を上手く活用して
より「体験したくなる」ように趣向を凝らすのもポイントの1つです。

その4:リワードが読み辛い(要改善ポイント)

※ 読みづらい、そして、比較しづらいリワードは、
支援者の取りこぼしに繋がるので避けるべし!

最後は「要改善ポイント」としましたが、
プロジェクトページを見ていて気になったのが
リワードに関する説明文の書き方です。

本プロジェクトのリワード一覧を見た時に、
「各リワードにどういう違いがあるのか?」
パッと見て判別しづらかった点。

体験イベント系のリワードの場合は、特に色々と説明が必要なこともあり、
「内容」「内訳」が混在しているのが気になりました。

「内容」・・その支援額で何がもらえるか?(特典の説明)
「内訳」・・特典の詳細(イベントについての詳細:開催日時や場所など)

これは書き方の問題になりますが、
箇条書きが同じインテンド&記号になっていたため
どこからどこまでが支援すると貰えるものか?が
よく読み込まないと分かり辛い印象でした。

また、リワード内容をよく見ると、
高額のリワード内容が、低額リワードの中味を
必ずしも引き継ぐわけではない点も気になりました。

例えば、「ステッカーが貰える」というリワードは
全てのリワードに含まれているのかと思ったが、そうでは無かった、など。

これについては、初めてプロジェクトページを見る人からすれば
本当に無いのか、それとも書き忘れなのか、判断できません。

なので、支援の躊躇や低い支援額に流れるケースが発生してしまったり、
募集後の問い合わせ(手間がかかる)やトラブルに繋がる可能性も考えられます。

対策としては、以下のように文章の書き方を工夫すれば、
より見やすく支援もしやすいリワード設定の見せ方になるのでは・・・。

1)同じ内容は同じ文言で統一する
2)インテンドや番号をつける
3)「上記に加えて・・」など表記を簡略化する

6. まとめ

以上、日本酒を支援者と一緒に製造するという
ユニークな取り組みのクラウドファンディング事例を紹介しました。

日本酒関連のクラウドファンディング・プロジェクトは
実は他にも結構たくさんあるのですが、
本プロジェクトは製品開発段階から支援者が関われる・・という
面白いリワード内容だったので、ピックアップしてみました。

今回の日本酒に限らず、
様々な分野で応用できる手法になりますので
ぜひ参考にしてみてください。

日本酒プロジェクトに
クラウドファンディングを活用するケースが

数多く存在します!

当ラボが定期的にまとめ記事を掲載している『NAVERまとめ』サイトでも、
クラウドファンディングと日本酒プロジェクトに関する事例をまとめています。

日本酒xクラウドファンディングが、今アツい!話題の事例36選

是非、こちらも参考にしてみてください!

(by おるず)

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