クラウドファンディング・ラボラトリでは
ユニークなクラウドファンディング・プロジェクト(案件)を
(主観的にではありますが)ピックアップ。
『一押しプロジェクト事例集』として、ご紹介しています。
今回の事例は、最近あちこち街中で見かけるようになった、コワーキングスペース。
神奈川県湘南エリア、藤沢駅に新しくオープンした
「コワーキングスペース」設立費用の調達事例です。
コワーキングスペースという運営形態だからこそ可能な
これならお金だしてもいい!
と思うような・・リワードのメニュー設定が
プロジェクト達成成功のポイントです!
【事例第10号】プロジェクト概要
「湘南・藤沢駅前にクリエイティブなコワーキングスペースをつくろう!」
http://camp-fire.jp/projects/view/1427
1 | 国/都道府県 | 国内/神奈川県藤沢 |
2 | 運営サイト | CAMPFIRE |
3 | 調達型 | 購入型 |
4 | 業界/セクター | コワーキングスペース運営 |
5 | 掲載時期 | 2015年2月20日~2015年4月7日 |
6 | 目標設定額/達成金額/支援者数 | 1,000,000円 / 1,970,000円 / 188人 |
7 | リワードの金額範囲 | 500円~200,000円 |
8 | プロジェクトオーナー関連サイト | 公式サイト 地域密着誌Webサイト Facebookページ |
1.プロジェクトの目的
プロジェクトオーナーは
湘南の地域情報誌「フジマニ」を発刊している会社です。
地域情報誌フジマニ
http://mag.fujimani.com/
今回コワーキングスペースを立ち上げる神奈川県藤沢市には、
人が多く集まる地域(人口42万人)であるにも関わらず、フルタイムで使える
コワーキングスペースやシェアオフィスが無かったそうです。
そこで、地元のクリエイターが集う
コワーキング&コミュニティ・カフェを作ろう!というのが
今回のプロジェクト目的。
『藤沢の駅前に、誰もが自由に使えて、
おしゃれでクリエイティブな居心地の良い場所をつくりたい』***
プロジェクト投稿サイトより引用
2.資金調達の用途
すでにコワーキングスペースを開設する物件は決まっており、
調達資金は、
A. 建築施工などの改装費用
B. 各種設備の導入費用
に利用されるとのこと。
綿密にスペース案が練られている様子で
プランによると部屋は全部で3つの構成・・
1)50㎡ほどの部屋
2)16㎡ほどのスタジオ(壁一面に姿見鏡を設置)
3)40㎡ほどのイベントスペース
かなり詳細なプランが練られていて、
項目ごとに費用用途もわかりやすく説明されています。
写真や3D間取りプランまで・・かなり具体的にイメージしやすいコンテンツ。
3.リワード設定
リワードに関しては、
「コワーキングスペースの利用チケット」が各種設定されています。
「1日利用券」「1ヶ月利用券」「6ヶ月利用券」・・
一番高額な200,000円のリワードは、なんと「永久利用券」!
その他・・
・オープニングイベントへの招待
・ホームページへの名前掲載
・オリジナルグッズ(Tシャツやマグカップ等)
などなど、
コワーキングを利用する人たちにとって
きめ細やかな嬉しいリワード設定となっています。
本プロジェクトの目標額達成・成功ポイント
その1:リワードのお得感
一番の成功要因として揚げられるのは、リワードのメニュー設定。
ほぼ全てのリワードに
「コワーキングスペースの利用チケット」が含まれているのですが、
支援額に対して、お得感がある設定になっています。
低額の支援でも、損をしない設定・・・
そして、高額になればかなりおトク感がでるような設定になっています。
1,000円の支援: 1日利用チケット(1,000円相当)→ 利用さえすれば損しない。
3,000円の支援: 1日利用チケット x 5枚(5,000円相当)→ 2千円分お得
5,000円の支援: 1日利用チケット x 20枚(20,000円相当)→ 1.5万円分お得
10,000円の支援: 1ヶ月使い放題チケット(15,000円相当)
30,000円の支援: 6ヶ月使い放題チケット(80,000円相当)
50,000円の支援: 9ヶ月使い放題チケット(125,000円相当)
100,000円の支援: 1ヶ月使い放題チケット x 12枚(180,000円相当)→ 8万円分お得
といった感じ。
しかも、利用チケットに加え、さらに・・・
様々な特典(グッズやパーティーへの招待等)がもらえるように、
リワードが設定されています。
利用チケットだけでも、普通に利用する際に購入することを考えれば
かなりおトク感があるので・・
このプロジェクトを見て「オープンしたら是非使いたい!」と
思った方は、とりあえず、前売りチケットを購入するような感覚で
支援する、というわけです。
その2:高額なリワードの用意
リワードでもう1つ注目すべき点は、
「高額のリワードにも支援者が集まっている」ことです。
支援結果の内訳をみると、以下のようになっています。
500円: 6人
1,000円:65人
3,000円:24人
5,000円:50人
10,000円:29人
30,000円:8人
50,000円:1人
100,000円:0人
200,000円:5人
1,000円〜10,000円の支援者が多いですが
(前述した通り、将来の利用者が利用券の事前買いをする感覚で・・)
特に注目すべきなのは・・
最高額の20万円に、5人の支援者がついている点。
20万円 x 5人 = 100万円
で、実に5名の支援者だけで、プロジェクトの目標金額を達成しているんですね。
1000円のリワードで65人集めても、65,000円ってのと比較すると、
とても効率的・・
ちなみに、20万円を支援した場合に受け取れるものは、以下です。
1)永久利用チケットの獲得
2)オープニングパーティーへの招待
3)メンバーズカード(500円相当)の獲得
4)オリジナルマグカップ&Tシャツを10セット
5)マグカップ5脚の店内リザーブ
6)ホームページへの名前掲載
7)店頭看板への名前掲載
8)オリジナルステッカー10枚
9)ドリンクチケット50枚
特に、「(1)永久利用チケット」が凄いですね。
こちらのスペースが何年間営業され続けるのかわかりませんが・・
ざっと計算してみると・・
1ヶ月使い放題チケットが15,000円なので、
約14ヶ月利用すれば元が取れる計算です。
目標金額の5分の1という
なかなか高額なリワード設定ですが、
もらえる特典などを見れば、利用頻度によっては超オトクな内容。
支援者の立場の場合、このコワーキングスペースがオープンすれば
1年は確実に利用する!と思えるなら・・・他の(2)~(9)までの
オマケ的リワードは儲けもん!の感覚でしょう。
さらに運営側の立場でこのリワード設定についてを考えてみると・・・
「永久利用会員」が数名いることで、1年以上利用される将来の収益が減るかも・・
ということはもちろん想定されるのでしょうが、
仮に、クラウドファンディングという仕組みが存在しない場合で
他の資金調達の手段を考えた場合として・・
● 開設資金の出資者をつのる?
→ 儲かれば、配当として利益を配分する・・?
● 金融機関や知り合いから融資を受ける?
→ 借りたお金は返済する義務が生じる・・・
が、考えられますが・・。
今回のケースのようなコワーキングスペースの運営の場合、
永久利用者からの支援をうけた場合の見返り(リワード)は、
将来、施設を利用してもらうだけ・・。
他の資金調達の手段では、支援を受けた見返りとして、
● 儲けを支援者に配分する
● 融資の場合は、支援を受けた金額分を、
将来の期間にわたり、利息をつけて返済する必要がある。
これらと比較分析してみればわかることですが・・・
今回の事例のような高額リワード設定が、
今後の運営の手間と費用(機会損失も含め)を考えると
きわめて、運営者にとっても利用者にとってもお互いWin-Winの
魅力的なリワード設定だという結論に至ります。
その3:自社メディアの強み
当プロジェクト・・大きな成功要因プロジェクトオーナー自身が
「自社のメディア」を持っている点もポイントです。
特に、今回のような
地元重視のコワーキングスペース開設のような場合には、
プロジェクトオーナーが「地元密着の地域メディア」を持ち、
発信していることは、大きな成功要因です。
自社メディアがあるという事で、
クラウドファンディング・サイトで立ち上げたプロジェクトを
容易により多くの人に告知できます。
それも、特に地元の地域情報誌となれば、尚更です。
自前のメディアを使って多くの人にプロジェクトを伝える事ができるので、
支援者が集まり<プロジェクト達成する可能性も高まります。
当プロジェクトの起案者(オーナー)は、毎月1日、
無料のフリーペーパー「フジマニ」を発行。
本プロジェクトの藤沢をはじめとする
湘南エリアの様々な店舗に設置されているそうで、
すでにこのフリーペーパーの公式SNS
TwitterやFacebookに、
多くのフォロワー(購読者)がいることも、
クラウドファンディングのプロジェクト告知に有利。
Facebook
https://www.facebook.com/fujimaniboss
Twitter
https://twitter.com/fujimani
自社メディアの記事や投稿を見てくれているファンは、
自社がどんな活動をしているのか?もよく知ってくれているはずなので・・
クラウドファンディング・サイトで立ち上げたプロジェクトを
運営サイトや、Google検索から見に来た人に比べて、
支援してくれる確率も高くなる傾向にあります。
自社メディアを運営していた事により、
クラウドファンディング・サイトでプロジェクトを立ち上げる以前から
メディアでの情報発信を通じ、支援してくれる可能性の高いターゲット層への
アクセスを持っていたこと・・
そのターゲット層へ、コワーキングスペースという新たなビジネスの紹介や
クラウドファンディングによる資金支援のお願いを告知できる手段があった事が
目標額達成の成功にも繋がったと言えます。
その4:情報発信力
さらに注目すべきポイントは、
クラウドファンディング・サイト内での積極的な情報発信です。
本プロジェクトが掲載されている、
クラウドファンディングの運営サイト CAMPFIRE を始め
ほとんどのクラウドファンディング運営サイトでは
プロジェクト掲載ページに「活動報告」などを随時投稿できる
情報発信用ページが用意されています。
本プロジェクトは、
さすが地元情報誌を発刊しているだけあって、
ここで積極的に情報発信を行なっています。
プロジェクト開始から達成までの期間、
2015/02/20〜2015/04/07(約45日程度)の間に、
29個の投稿があります。
他のプロジェクトと比較すると、これはかなりの頻度です。
(実際にひどいな~と思わせるプロジェクトの中には
活動報告が一切ないところもあります!)
内容も、単なる日記的なものではなく・・
・建築模型のサンプルや工事の様子を写真付きで紹介
・関係者や開催予定イベントの紹介
・第三者からの応援メッセージ
など、よりプロジェクトの信頼度をアップしたり、
実際にコワーキングスペースを利用する際のイメージが掴みやすいような
投稿をされていました。
本当にスペースが開設されるのか?など
プロジェクト開始当初に支援を躊躇してたとしても
しっかりとした情報発信があることで進捗状況を知ることができ、
途中から支援してみよう!と、支援に踏み切った人も多いと思います。
進捗状況などを発信することで、
資金調達したお金の使い道が確実に見えるような情報を、
効果的にクラウドファンディング・サイト内で行なった事も
目標額達成の成功に繋がったのではないでしょうか。
まとめ
本プロジェクトは、1,000,000円の目標金額に対し
1,970,000円(197%)の資金調達を達成している事からも、
うまく支援者(=潜在顧客=将来の利用者)の
ニーズを掴んで成功した例と言えるでしょう。
今回は特に、
「自社メディアと、効果的な情報発信力を持っていた点」も
大きな成功要因だったと言えるのではないでしょうか。
もし、全く何も無いゼロ状態から、
クラウドファンディング・サイトにプロジェクト掲載し、
資金調達を開始したとしたら・・・
ここまで集まらなかったのではないかと思います。
こうした「自社メディア」を持つ事は、今すぐは難しいですが、
まだまだプロジェクトの企画段階・・という方は、
何等かの形で情報発信を開始する・・SNSを始めて賛同者を集めることや、
もしくは自分のプロジェクトを支援してくれそうな人が
集まっていそうなメディアを探してアプローチする事も、
プロジェクト成功には重要です。
また、
クラウドファンディング・サイトで支援してくれた人は
サービス開始時には顧客となる可能性となる人々。
サービス開始以前の
準備段階(クラウドファンディングで資金調達している時点)から、
将来の顧客を得ることができるという点で、
新規コワーキングスペース運営はクラウドファンディングと
相性も良いのではないでしょうか。
個人的に、最近仕事がらみで
国内各地へ行く事が多いのですが・・
コワーキングスペースのように気軽に入れて
仕事がガッツリできて、かつ長居できる場所。
そしてその地元の人と繋がることもできる場所。
本当に使い勝手がよくて重宝させてもらっています。
最近は数も増えてきたので、
趣向を凝らしたコワーキングスペースも
増えてきているように思います。
今後も面白いコワーキングスペースが、
クラウドファンディングを活用することによって、
益々増えていってほしいですねー。
NAVERまとめに
コワーキングスペースの事例を追加!
当ラボのNAVERまとめでも、
クラウドファンディングを活用したコワーキングスペースの
立ち上げ事例をまとめてみた。
コワーキングスペース開設/運営に
クラウドファンディングを活用!
事例31選まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2144058590666351301
こちらも、是非参考にしてみてください!
(by おるず)